非線形な世界

訂正

扉の図にあるvoids

カバーの図から二点欠落

; 印刷所とデザイナー間のfile交換の問題によるらしい.

 さらに二つの正方形の図(相変化によるパタン形成の図)の色がまったくおかしい.

はじめに

第1章 

p31 ラッセルパラドクス

最後のパラグラフの訂正.小田啓太さんからの指摘にしたがって,原文を次のように訂正する.その説明はこの後にある.[ http://d.hatena.ne.jp/nuc/20100607/p3 田崎晴明氏が教えてくれた.そのあと小田さんと直接やりとり.両氏に謝意を表する.]

標準的公理系(Zermelo-Fraenkelの公理系)では,`正則性の公理(foundation axiom) (FA)'というものがおかれている. この公理は与えられた集合が限りない`入れ籠構造'になっているのを禁止する, つまり, この集合がある要素からできていて, その要素はまた別の要素の集合とみなされ, そして, そして, と続くのがどこかで切れることを要求している(したがって$a¥in a$は禁じられる).Mossは「数学的宇宙が段階的に空集合を基にして組み立てられていくという描像は, 物理的世界が個々の粒子からできているとか社会が基本的には独立の個人からできているという見方と関連している.この関連が数...

小田啓太さんから(上の引用に見るとおり)次のことを指摘された.

「公理を加えることによって矛盾が生じないようになっているのは論外として、論理式と集合を混同しているようだ。」

小田さんのさらなる私信による補足説明は

公理 A B C から矛盾が導出できたとします。

ここに公理 D を加えて、新たな公理系を作ったとしても

A B C D から矛盾は導出できますね。

これ、thinning と呼ばれる rule of inference です。

これはとてもよくあることで、奈良女子大学の鴨さんも同じことを書いています。

よくある間違い2 「正則性公理(基礎の公理)はパラドックスを排除するために導入された」

数学の理論で公理を増やして定理が減ることはありません。だから、公理を追加することで矛盾が解消することなど、ありえません。集合論そのものをよく知らなくても、常識を働かせるだけですぐわかる間違いです。なんでこんなのを信じちゃう人がいるんでしょうねえ。

本書の原文では

「ラッセルパラドクスを避けるために標準的公理系(Zermelo-Fraenkelの公理系)ではa \in aが生じないように,`正則性の公理(foundation axiom) (FA)'というものを置く.」と書いてしまっている.この文章は,FAをおかないとラッセルパラドクスが生じるかのような書き方になっていて,したがって,上に指摘された誤りを犯している.FAを置くと確かに a \in aは禁止されるが,これがない体系がパラドクスを生むわけではない.だからAFAも考えられる.

この事情は小田さんの私信によるさらなる説明から明らか.

素朴集合論は、自由変数が一つだけの論理式に対応する集合が存在する

{x|\phi(x)}

としたので、ラッセルのパラドックスの議論で矛盾が導出できて役に立たない理論になりました。

ここにどんなに公理を加えても、矛盾は導出できるのです。

そこで、矛盾しないように {x|\phi(x)} よりも弱い公理だけを集めて公理系を作りました。

さらに超限帰納法のためにあると便利なので正則性公理が加わりました。

「論理式」と集合の混同については,ここの話は集合論もまともにない時代の話を無理やり今様の記法で書いたので「混同」だが,その事情は小田さんの補足から明らか.

この付録 A3 の力点は後ろの方にあり,Russelはダシに使われているようにさえみえるだろうが,実際ラッセルパラドクスの説明を書いた動機が不純だったのも誤りの原因の一つだった.

要するにラッセルパラドクスと関連してFAの意議を強調するのはよろしくない.

第2章

p61 脚注52を次のように訂正.

「つぎの図式が可換」という意味は,要するに.右上隅を通る経路に沿っても左下隅を通る経路に沿っても答えが一致するということ.

訂正理由

ここで「可換図式」の説明の中の「矛盾」という言葉の使い方が数学のふつうの使い方と違うのではないかと,小田啓太さんに指摘された.矛盾とはAと非Aがともに同じ論拠で導出されることであって,単なる食いちがい,とは異なる.ここの文脈では話が簡単だから\varphi \circ f^n = \sigma \circ \varphiと書けばいいのだが,この式がすぐ意味をなすような人に説明は不要のはずなのでこれを書かなかった.ここに異議が出る最大の(諸悪の)根源は「図式が可換である」とは,と書き始めてあたかも一般的定義を与えるような出だしであるのに,書いてあることはここにしか通用しない矮小化した話であったことである.そこで話をはっきりと限定する.

p63 補註2.3.1の中の付2. 4 A2.3Aの間違い(ISUの松岡氏に注意された.感謝.).

p63 補註2.3.1の中の「有名な例」2次のチェビシェフ多項式についての結果を書いてしまった. sin^2[2^n Arcsin \sqrt{x_0}] が正しい式(梅野健氏に注意された.感謝.)

p82 下から2行目:

B \cap C = { \emptyset } とあるのは B \cap C = \emptyset のまちがい(アホなミス). (田崎晴明氏が教えてくれた http://d.hatena.ne.jp/nuc/20100607/p3 に指摘されている.田崎氏によるとこの指摘をされた方は小田啓太氏だそうで,感謝.)

p83 脚注102 ほとんど末尾:

「エルゴード理論的に 統計力学の基礎を与えようとする考え方に一層都合が悪い」

訂正 「エルゴード理論的に統計力学の基礎を与えようとする考え方に一層都合が悪い」

p122 二番目の完全なパラグラフ上から3行目 数列(2.9.1) -> p101の数列 (東工大 佐藤拓彦氏の指摘 感謝)

第3章 

p175 鈴木増  鈴木増雄(梅野健さんに注意されました.まことに申し訳ありません.)

p177 (3.7.7), (3.7.8), (3.7.9)A^3の係数 i/2はすべて-i/8の間違い[(3.7A.8)からわかるとおり] ( Universite Paris Descartesの新垣貴史さんに指摘された. 感謝)

第4章 

第5章