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磁性体についての補足
イジング相互作用はハイゼンベルグモデル(ハイゼンベルグモデルでは,スピンは3次元のベクトルσ として表現され,スピン間の相互作用はスピン間のスカラー積σ_i · σ_j に比例するネルギーを持つとされる.このときたとえばx-方向成分の間の結合が特に強い異方的な相互作用のあるときはイジングモデルに似てくる.) の異方性のきつい場合として実現され,ハイゼンベルグ相互作用そのものは,原子間の電子交換相互作用として量子力学的に理解することができる(たとえば,小口武彦「磁性体の統計理論」(裳華房) 参照.古典力学的には磁性相互作用はでてこない).しかし,量子力学的に相互作用の正当性が説明できることは相変化の理解にとって本質でない.もちろん,物性工学的にある性質を持った磁性体を作りたいというときには指針として重要である.さらに,自然がある種の原子の作る結晶で磁性体を作るためにもたぶん本質的だろう.しかし,磁性体に見られるタイプの「相変化」を実現するのにスピンやその間のイジング相互作用が必須なわけではない.
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