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lim sup などの説明補足
lim sup などの説明補足: lim inf n→∞ a_n はlim n→∞ inf{a_m : m ≥ n} のこと.つまり,どんどん大きくなるn より先のa_m 全体の下限(a_m(m ≥ n) のどれよりも大きくない数のなかで一番大きい数) をn の関数と見て,そのn → ∞での極限値.lim sup は上の説明の中で,inf をsup(上限) に置きかえたもの.
撹拌集合の説明
(B) における「lim inf(下極限) がゼロになる」というのは R 中のどんな2 点から出発した軌道も,時間さえかければ,いつか限りなく近づくということを意味している(しかし,(A) のゆえに近づきっぱなしということはない).これに対して,(C) における「lim sup(上極限) がゼロでない」ということは,どんな周期点にも落ち込んでしまわないということを意味している.
シャルコフスキの定理との関係
上の定理2.3.1 はリーとヨークの定理から証明できない: シャルコフスキの定理 を使っても証明できない:
A. N. ˇSarkovskii, “Coexistence of cycles of a continuous map of a line into itself,” Ukr. Mat. Z. 16 , 61-71 (1964) [P. ˇStefan, “A theorem of ˇSarkovskion the existence of periodic orbits of continuous endomorphisms of the real line,” Commun. Math. Phys. 54 , 237 (1977) も見よ].M. Misiurevic, “Remarks on Sharkovsky’s theorem,” Am. Math. Month. Nov 1997, p846 はよいまとめである.
( 未完 )
ファイゲンバウムの臨界点
M. Feigenbaum, “Quantitative universality for a class of nonlinear transformations,” J. Stat. Phys. 19, 25–52 (1978).臨界現象とスケーリングの成立そのものはシナイによる熱力学的枠組みを知っていれば自明.Ya. G. Sinai, “Gibbs measure in ergodic theory,” Russ. Math. Surveys, 166(4), 21 (1972) 参照.写像力学系であるという性質を使うと非常に立ち入ったことまで言えることが多少の興味を引く点である.
この臨界点では位相的エントロピー(系に許される不変測度のコルモゴロフ-シナイエントロピーの上限値と思ってよい) がゼロなので本節で定義したカオスではないが,撹拌集合を持つ例がある: J. Smıtal, “Chaotic functions with zero topological entorpy,” Trans. Amer. Math. Soc., 297, 269 (1986). エントロピーがゼロの力学系についてのよいまとめがV. V. Fedorenko, A. N. ˇSarkovskii and J. Smital, “Characterization s of weakly chaotic maps of the interval,” Proc. Amer. Math. Soc., 110, 141-148 (1990) にみられる.
カオスの別の特徴付け
たまたま次のを発見した.
Pat Touhey, ``Yet Another Defilnition of Chaos,’’ AMM 104, 411 (1997).
Given a metric space X and a continuous mapping f: X -> X, we say that f is chaotic on X if given U and V, non-empty open subsets of X, there exists a periodic point p \in U and a non-negative integer k such that f^k( p) \in V, that is, every pair of non-empty open subsets of X shares a periodic orbit.
この論文はこれがDevaneyの定義と一致することを示している.