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p74

中世化危機

アルキメデス著作羊皮紙が何を書くために再利用されていたかは中世化が何であるかに関して象徴的であろう.

 紀元前19 年にアグリッパが建設させた南フランスニームに遺るポン・デュ・ガール(長さ370 メートル,高さ48 メートル歩道つき水道橋) について「ローマ帝国滅亡後中世に生きた人々は,ローマ人が残したもであることを忘れ,これほど建造物を人間がつくれるわけがなく,悪魔がつくっただと信じて「悪魔橋」通称が生まれた...(塩野七生「ローマ人物語VI パックス・ロマーナ」(新潮社1997) p224)

 中世が暗黒時代であるという通念は迷妄であり進歩的な考え方ではないという説はこ頃ではふつうかも知れないが,「不景気時代」である中世には当然人智が跼蹐するは自然であり,数々退行現象が避けられなかった.中世はまともに古代より優れているとする見方は相対主義的価値観となじむもであり到底まともな考えではない.

中世とは何か

宮崎市定定義によれば要するに慢性的不景気時代であり,経済規模が小さいがゆえに必然的に小さな政府世界であり,すべて自己責任世界である.さらに下層階級を 構造的に階層下位に固定化することで 世界を安定化する イデオロギー信奉者に当下層階級成員が多い世界である. 次対談断片参照:

III-914

塩野: 要するに,法精神がなくなるとどうなるか.腕力が前面に出てくる.

池内: 自力救済世界になってしまうわけですね.

塩野: よく言えば,自力救済ですが.

池内: しかし,大抵,自力だけでは対応できないで,宗教で補完するようにもなる.

塩野: 宗教は個人的な精神平安を与えてくれるであればいいですが,人々が絶望したとき希望を与えるようになると困るなと私は思っています. パクス・ロマーナは実に簡単なことだった.紀元二世紀に,皇帝ハドリアヌスがローマ帝国全土を巡回します.文字通り辺境軍団基地を巡回しているですが,驚くほど軽装で旅をしている.技術者集団だけを連れて,一個大隊にさえ警備をさせていない.

---中略---

塩野: ゲーテが,「秩序なき正義」と「秩序ある不正義」どちらを選ぶかと問われれば,後者選ぶと言いましたが,私も同じ考えです.---中略---私は,普通人々が安心して家を出て,旅ができるという世界を作るが,統治者役割だと思っています.

池内: ヨーロッパ中世というは,沿岸部でも内陸部でもそういう安全が守られなかったんですね.

[塩野七生 x 池内恵「『パクス・ロマーナ』が壊れるとはどういうことなか」波 2009/1, p7] 

確率とはなにか,補足

Jason Rosenhouse The Monty Hall Problem, the remarkable story of math’s most contentious brain teaser (Oxford University Press 2009) の3.13節に確率解釈についてまとめがあり,p87に頻度説弱点と言われているもがまとめてある.そ一つを除いて反論済みか容易に反論できるもである.残っている一つは,頻度説によれば確率は有理数にしかならない,というもである.ちょっと面白いが,しかし,無理数は有理数極限であるだから,試行回数を無限にする極限を考えればすむことであり.こういうことが真面目に取り上げられるというは不思議でさえある.

 こ本自体は確率を教えるときにいろいろと役に立つ話種本としては使える.