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《エルゴード性は平衡統計力学にとってどうでもいい》補足
この補註を書いたときにはG. Gallavottiの Statistical Mechanics: a short treatise (Springer 1999)の第1章を精密に読んでいなかった.これによると,Boltzmannはここに指摘されている時間スケールの懸隔に気がついて,ミクロ状態は極めてまれな例外をのぞいてすべて同じ熱力学的観測値を与えることを見抜いた.しかし,これは後継者達には理解されず.忘れられてしまったようである.つまり,この補註に書いてある後継者達についてのコメントは正しい.
正直言って,これを読むまでは,元祖自身統計力学がわかっていなかったのではないかと思っていた.これを読んでBoltzmannの偉大さがほんとうにわかった.
混合性(2.6.3) のもう一つの見方 は,n 時間ステップ後にAに来るような点のアンサンブルはn が大きい大昔にはぼーっと相空間全体に‘一様に’ 広がっていたので,それがB に重なる割合はB の重みに比例している,というものである.